「東京でおすすめの税理士は?」とChatGPTに聞く時代。税理士・社労士・行政書士・弁護士など士業事務所が、AI検索で正しく紹介され、候補に挙がるための対策を、実際の検証結果をもとに業種別に解説します。

金井 成仁
合同会社NAVIGATE 代表 | データサイエンティスト / AIコンサルタント
「東京でおすすめの税理士を教えて」
こう聞かれたChatGPTは、実際にいくつかの事務所名を挙げて答えます。私たちが検証したときも、特定の事務所が具体的な特徴の説明つきで紹介されました(検証の詳細はAIに「おすすめの会社」を聞いたら、あなたの会社は出てきますか?にまとめています)。
税理士・社労士・行政書士・弁護士。士業を探す人の行動は、これまで「地域名+業種」でのGoogle検索が中心でした。その入口が、いまAIに広がりつつあります。本記事では、士業事務所がAI検索で正しく紹介され、候補に挙がるための対策を、私たちの検証で見えた事実をもとに解説します。
1. 「比較して選ぶ」タイプのサービスだから。 士業は高関与のサービスで、依頼者は必ず複数の候補を比べます。AIに「おすすめは?」と聞く行動と相性が良く、そこで名前が挙がるかどうかが候補入りを左右します。
2. 検索の主戦場が「地域×専門」だから。 「渋谷 税理士 クラウド会計」「大阪 社労士 就業規則」のような組み合わせ検索は、AIが最も得意とする質問形式です。事務所側が発信で「地域」と「専門」を明確にしているほど、AIはその事務所を該当する質問に結びつけやすくなります。
3. 同名・同種の事務所が多く、混同リスクが高いから。 私たちの税理士検証では、AIが複数の別々の事務所の情報を一つの事務所として合成して回答する事例がありました。所在地も規模も得意分野も違うのに、です。士業は事務所名が似通いやすく、この「取り違え」が起きやすい業種です。間違った情報で紹介されることは、信頼で成り立つ士業にとって実害になります。
カテゴリ検索で選ばれる前に、事務所名で聞かれたときに正確に説明される状態が先です。
Googleビジネスプロフィール(GBP)の整備。 事務所名・住所・電話・営業時間・業種カテゴリを正確に。士業は「地域の専門家」としてローカル検索経由で参照されることが多く、GBPはAIにとっても信頼度の高い情報源です。
プロフィールページの充実。 代表者の氏名、保有資格と登録番号、経歴、所属会(税理士会・弁護士会等)、得意分野、料金の目安。AIは「誰がやっている事務所か」を重視します。経歴と専門を具体的に書いたプロフィールは、AIが引用できる貴重な固有情報です(書き方はAboutページがなぜ重要なのかを参考にしてください)。
構造化データの実装。 Organization に加えて、LocalBusiness 系のスキーマ(税理士なら AccountingService、法律事務所なら LegalService など)で所在地・営業時間・提供サービスを機械可読にします。同名事務所との混同対策として、sameAs で公式SNSや所属会のプロフィールページと結びつけることも有効です(構造化データ(JSON-LD)入門)。
NAP情報の統一。 事務所名・住所・電話番号の表記を、自社サイト・GBP・士業ポータル・SNSで一字一句そろえます。表記ゆれは混同の温床です。
私たちの検証でChatGPTが挙げた税理士事務所には、はっきりした共通点がありました。Web上での情報発信量が豊富であることです。クラウド会計特化、創業支援に実績あり、経営伴走型。AIはそれぞれの事務所を「特徴つき」で説明しましたが、その特徴は事務所自身の発信と第三者からの言及をもとに構成されていました。
これを踏まえると、やるべきことは次の順になります。
1. 「専門特化」を言語化する。 「なんでも対応します」はAIにとって特徴のない事務所です。「建設業の税務に強い」「外国人雇用の労務手続きに強い」のように、業種・テーマ特化を明示したページを作ると、該当する質問でAIが結びつけやすくなります。
2. 質問に答えるコンテンツを作る。 依頼者がAIに聞く質問(「顧問料の相場は?」「決算だけ頼める?」「就業規則の作成費用は?」)に、自サイト上で明確に答えておきます。1見出し1質問の構造とFAQの構造化データが有効です。
3. 第三者からの言及を増やす。 AI可視性と最も強く相関するのは第三者メディアでのブランド言及という調査があります(Ahrefs、75,000ブランド分析)。士業なら、士業ポータルへの掲載、地域メディアや業界紙への寄稿、セミナー登壇のレポート記事などが該当します。自社サイトの記事量産よりも、外での言及のほうが効きます。
4. 独自の知見・データを出す。 「顧問先の◯割がクラウド会計を利用」「創業融資の平均調達額」のような、自事務所しか出せない情報はAIに引用されやすい素材です。守秘義務に反しない範囲での統計化がポイントです。
税理士・会計士: クラウド会計(freee・マネーフォワード等)対応の明示は、AI検索でも有効な差別化軸です。「〇〇(地域) 税理士 freee」のような具体的な組み合わせで聞かれたとき、対応を明記した事務所が挙がりやすくなります。
社労士・行政書士: 手続き解説コンテンツ(助成金、就業規則、許認可、ビザ)はAIの回答素材として引用されやすい領域です。ただし制度は改正が多いため、古い情報は逆効果になります。更新日を明記し、定期的に見直してください。
弁護士: 広告規制の観点から、もともと誇大な表現は使えない業種です。これはAI検索でも同じで、AIは「勝率◯%」のような主張よりも、取扱分野・解決事例の類型・執筆実績のような検証可能な情報を参照します。分野特化ページ(労働問題、相続、企業法務など)を分けて作ることが基本です。
対策の効果は、1回AIに聞いてみた結果では判断できません。AIの回答は同じ質問でも毎回ゆれるためです。「事務所名で正確に説明されるか」「地域×専門の質問で名前が挙がるか」を、複数回・複数のAIで確認し、割合(出現率)で見てください。考え方はAIEO対策の効果測定で詳しく解説しています。
士業のAI検索対策は、特別な裏技ではありません。正確な事務所情報の一貫した整備、専門特化の言語化、質問に答えるコンテンツ、第三者からの言及。信頼で選ばれる士業がこれまで積み上げてきたものを、AIが読み取れる形に整える作業です。
同業の事務所がまだほとんど着手していない今は、先行の価値が大きいタイミングでもあります。
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