広告業界の標準化団体IABが2026年8月、AIでの可視性を測る共通のものさし『Measuring Visibility in the AI Era』を公開しました。4つのP(Presence/Prominence/Portrayal/Persuasion)とdecision-grade計測の考え方を一次ソースで整理し、日本の中小企業がまず測るべきものを解説します。

金井 成仁
合同会社NAVIGATE 代表 | データサイエンティスト / AIコンサルタント
こんにちは。合同会社NAVIGATE代表の金井です。
2026年8月3日、広告業界の標準化団体であるIAB(Interactive Advertising Bureau)が、AI時代の可視性計測に関するフレームワーク「Measuring Visibility in the AI Era」を公開しました(IAB公式)。ChatGPTやGeminiのようなAIの回答の中で、自社がどれだけ・どのように登場しているかを、業界として共通の言葉で測ろう、という36ページの文書です。
正直に言うと、私はこのニュースを見て少し背筋が伸びました。中身が、当社がこれまで実践してきた計測の考え方とかなり重なっていたからです。本記事では、IABが何を定義したのかを一次ソースで整理し、そのうえで日本の中小企業がまず何を測ればいいのかを解説します。
要点を先に並べます。
AIでの見え方を測るツールは急増していますが、各社が別々の質問セットと手法を使うため、同じ企業を測っても結果が食い違います。だからまず共通の語彙と基準を持とう、というのがこの文書の狙いです。
IABは可視性を、ビジネス価値に近づく順で4段階に整理しています。
| 階層 | 問い | 主な指標 |
|---|---|---|
| Presence | そもそも登場・引用されるか | 言及率、引用率、シェアオブボイス |
| Prominence | どの位置に、どれだけ目立って出るか | 掲載順位、ランキング |
| Portrayal | どんな文脈で、どれだけ正確に描かれるか | センチメント、事実誤認・幻覚の率 |
| Persuasion | その登場が行動につながるか | 推奨の強さ、クリック率 |
この4段階は、当社がふだんお客様の可視性を見るときの観点とほぼ同じです。まず出ているか(Presence=出現率)、次にどう出ているか(Prominence)、正しく描かれているか(Portrayal)、最後に行動に効いているか(Persuasion)。とくにPortrayalは、当社が繰り返し扱ってきたテーマそのものです。AIが自社を別の会社と取り違える、事実と違う説明をする、といった問題はこの階層で捉えられます。実際に起きた取り違えとその直し方はAIが自社を別の会社と説明する問題と、その直し方で詳しく書いています。
私がこの文書でいちばん重要だと思ったのが、この2段階の区別です。
なぜこの線引きが要るのか。AIの回答は、同じ質問でも毎回同じにはならないからです。1回の観測でたまたま出た・出なかったを見ても、それは方向性の材料にはなっても、判断の根拠にはなりません。なぜAIの「おすすめ」が毎回変わるのかはAIの「おすすめ」は毎回変わるで、その前提のうえで効果をどう設計して測るかはAIEO対策の効果測定で解説しています。
当社がずっと「1回のスクリーンショットは、サイコロを1回振っただけ」と言い、出現率を複数回・信頼区間つきで見て、施策の前後をコントロールと比較してきたのは、まさにこのdecision-gradeの領域に立とうとしてきたからです。業界標準が、同じ方向に言葉を与えてくれた、という受け止めをしています。
IABと関連報道が挙げている数字は、現状の難しさを端的に示しています。
引用元が月の半分入れ替わり、プラットフォーム間の重なりが1割程度という数字は、AIごとに参照する情報の地図が違うこと、そして時間とともに動くことを裏づけています。この「AIごとに見ている場所が違う」構造はクエリ・ファンアウトの話ともつながります。単発・単一AIの観測で全体を語れないのは、こうした理由からです。
前回、ChatGPT広告が日本でも開始で、広告枠は買えても、AIが回答本文で自然に言及する「おすすめ」は広告費では買えない、と書きました。今回のIABの文書は、その「おすすめ」に相当する自然な可視性を、どう測るかの話です。広告(買える枠)と可視性(積み上げる資産)は別物で、後者こそ計測と改善の対象になります。同じIABが、広告の透明性と、可視性の計測の両方に基準を出し始めたことは、この領域が本格化しているサインだと見ています。
4つのPをすべて、いきなりdecision-gradeで測る必要はありません。日本の中小企業の現実的な優先順位は、こうなります。
AI経由の流入はまだ全体のごく一部という企業が大半ですが、その現状認識と優先順位はAI経由の流入が全体の1%でも、今から備える理由で整理しています。「まだ1%だから測らなくていい」ではなく、「1%のうちに、正しく測る型を作っておく」という順番です。
当社は自社の出現率を、この考え方で継続計測し、スコアを公開しています(AI可視性診断・自社実証)。業界がdecision-gradeと呼び始めた基準を、私たちは自分の会社で先に回してきました。その過程も含めて、これからも計測データごと公開していきます。
IABが可視性の計測に標準を持ち込んだことは、「AIにどう見えているかは、感覚ではなく数字で測るもの」という認識が、業界の共通言語になり始めたことを意味します。そして測り方には質の差があり、判断に使うならdecision-gradeが要る。ここが今回のいちばんの学びです。
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