Looker StudioのData Agent、カインズの190万行Excel自動化。Googleが進めるAI×データの波は、中小企業にとって脅威か追い風か。

金井 成仁
合同会社NAVIGATE 代表 | データサイエンティスト / AIコンサルタント
2025年後半から2026年にかけて、GoogleがBI(ビジネスインテリジェンス)領域で立て続けに大きな動きを見せています。
Looker Studio(旧Data Studio)にConversational Analytics機能を搭載。BigQueryにはData Agentを実装。さらにCode Interpreterで、自然言語の質問からPythonコードを自動生成して高度な分析を行う機能まで加わりました。
一言で言うと、「データに日本語で質問すれば、AIが答えを出してくれる」世界を、Googleが本気で作りにきています。
Conversational Analyticsは、Looker StudioやBigQuery上のデータに対して、自然言語で質問できる機能です。
従来のBI:ダッシュボードを設計 → グラフを作成 → 数値を読み取る
Conversational Analytics:「先月の売上を地域別に教えて」と聞く → AIが回答
裏側ではGoogleのLLM「Gemini」がSQLを生成・実行し、結果を自然言語で返してくれます。SQLを書けなくても、ダッシュボードを作れなくても、データから答えを得られる。
さらにData Agentを使えば、特定のデータセットに対して専用のAIエージェントを作成できます。「このテーブル群はこういうビジネスの文脈で、このフィールドはこう解釈する」という指示を事前に設定しておくことで、より正確で文脈に沿った回答が可能になります。
この流れを象徴する事例が、ホームセンター大手のカインズです。
カインズでは従来、需要予測の結果として190万行に及ぶデータを表計算ソフトで処理していました。1回の出力で6〜7個のファイルに分割され、出力だけで2日。そこから棚割りデータや在庫データとの照合、発注点のメンテナンスに2〜3日。専任のエンジニアが列ずれの確認やテストに追われ、現場のニーズに迅速に応えることが困難だったといいます。
カインズはこの課題を解決するために、BigQueryとVertex AI Agent Builderを組み合わせたデータ基盤を構築しました。ユーザーが自然言語で条件を指示すると、AIエージェントがBigQueryのデータを直接操作・抽出します。表計算ソフトのメンテナンスは不要になりました。
数日かかっていた作業が、AIに聞くだけで完了する。これが「データと対話する」世界の具体像です。
「カインズのような大企業だからできたのでは?」——そう思う方は多いかもしれません。
確かに、カインズの事例はGoogle CloudのBigQuery+Vertex AI Agent Builderという、エンタープライズ向けの技術スタックで構築されています。導入・運用にはそれなりのコストと技術力が必要です。
しかし、「データに自然言語で質問して答えを得る」という体験自体は、中小企業でも実現できます。しかも、すでに実現している企業があります。
大企業がGoogle Cloudで数千万円かけて構築する仕組みを、中小企業向けに手の届く形で提供する。これが私たちNAVIGATEが取り組んでいることです。
NAVIGATE BIはApache Supersetをベースにしたビジネスインテリジェンスツールで、日本語の自然言語でデータに質問できる機能を搭載しています。
Google Analytics 4、Google Ads、BigQuery、MySQL、PostgreSQL、kintone——複数のデータソースを統合し、ダッシュボードで可視化した上で、日本語で質問するだけで分析結果を得られます。
GoogleのConversational AnalyticsはBigQuery限定ですが、NAVIGATE BIはマルチデータソースに対応。しかも設計から運用まで一気通貫で提供するので、社内にエンジニアがいなくても導入できます。
BI領域ではもう一つ大きな動きがありました。Tableauが無料版(Free Edition)をリリースしたのです。
100以上のデータコネクタに対応し、BigQueryとの接続も可能。商用利用もOKという太っ腹な内容です。
ただし、Tableau Free Editionにはダッシュボードを他の人と共有・公開する機能がありません。分析は個人のPC上で完結します。チームでデータを共有して意思決定に使う、というユースケースには対応できない。
つまり、Tableau Freeは「個人で分析したい人」向け、NAVIGATE BIは「チームでデータを共有して経営判断に使いたい企業」向け、という棲み分けです。
GoogleがConversational Analyticsを無料提供し(2026年9月まで)、Tableauが無料版を出し、カインズのような大企業がAIエージェントでExcel業務を自動化する。
これらの動きが示しているのは、「データに話しかけて答えを得る」という体験が、一部の技術者だけのものではなく、すべてのビジネスパーソンのスタンダードになろうとしているということです。
中小企業にとって、この変化は脅威ではなく追い風です。
大企業だけが持っていたデータ分析の力が、ツールの進化とコストの低下によって、中小企業にも手の届くものになっている。自然言語でデータに質問できる環境があれば、経営者自身がデータドリブンな意思決定をできるようになります。
問題は「やるかやらないか」ではなく、「いつ始めるか」です。
Googleが進める「データと対話する世界」の要点を整理します。
企業規模に関わらず、データドリブンな経営を実現できる未来。それがNAVIGATEの目指す世界です。