データ活用2026年4月24日

Googleが「データに話しかける」時代を本気で作りにきた——中小企業にとっての意味

Looker StudioのData Agent、カインズの190万行Excel自動化。Googleが進めるAI×データの波は、中小企業にとって脅威か追い風か。

金井 成仁

金井 成仁

合同会社NAVIGATE 代表 | データサイエンティスト / AIコンサルタント

Googleが「データと対話する世界」を作ろうとしている

2025年後半から2026年にかけて、GoogleがBI(ビジネスインテリジェンス)領域で立て続けに大きな動きを見せています。

Looker Studio(旧Data Studio)にConversational Analytics機能を搭載。BigQueryにはData Agentを実装。さらにCode Interpreterで、自然言語の質問からPythonコードを自動生成して高度な分析を行う機能まで加わりました。

一言で言うと、「データに日本語で質問すれば、AIが答えを出してくれる」世界を、Googleが本気で作りにきています。

Conversational Analyticsとは何か

Conversational Analyticsは、Looker StudioやBigQuery上のデータに対して、自然言語で質問できる機能です。

従来のBI:ダッシュボードを設計 → グラフを作成 → 数値を読み取る

Conversational Analytics:「先月の売上を地域別に教えて」と聞く → AIが回答

裏側ではGoogleのLLM「Gemini」がSQLを生成・実行し、結果を自然言語で返してくれます。SQLを書けなくても、ダッシュボードを作れなくても、データから答えを得られる。

さらにData Agentを使えば、特定のデータセットに対して専用のAIエージェントを作成できます。「このテーブル群はこういうビジネスの文脈で、このフィールドはこう解釈する」という指示を事前に設定しておくことで、より正確で文脈に沿った回答が可能になります。

カインズの事例:190万行のExcelが消えた日

この流れを象徴する事例が、ホームセンター大手のカインズです。

カインズでは従来、需要予測の結果として190万行に及ぶデータを表計算ソフトで処理していました。1回の出力で6〜7個のファイルに分割され、出力だけで2日。そこから棚割りデータや在庫データとの照合、発注点のメンテナンスに2〜3日。専任のエンジニアが列ずれの確認やテストに追われ、現場のニーズに迅速に応えることが困難だったといいます。

カインズはこの課題を解決するために、BigQueryとVertex AI Agent Builderを組み合わせたデータ基盤を構築しました。ユーザーが自然言語で条件を指示すると、AIエージェントがBigQueryのデータを直接操作・抽出します。表計算ソフトのメンテナンスは不要になりました。

数日かかっていた作業が、AIに聞くだけで完了する。これが「データと対話する」世界の具体像です。

中小企業には関係ない話?

「カインズのような大企業だからできたのでは?」——そう思う方は多いかもしれません。

確かに、カインズの事例はGoogle CloudのBigQuery+Vertex AI Agent Builderという、エンタープライズ向けの技術スタックで構築されています。導入・運用にはそれなりのコストと技術力が必要です。

しかし、「データに自然言語で質問して答えを得る」という体験自体は、中小企業でも実現できます。しかも、すでに実現している企業があります。

中小企業版の「データと対話する」を実現する

大企業がGoogle Cloudで数千万円かけて構築する仕組みを、中小企業向けに手の届く形で提供する。これが私たちNAVIGATEが取り組んでいることです。

NAVIGATE BIはApache Supersetをベースにしたビジネスインテリジェンスツールで、日本語の自然言語でデータに質問できる機能を搭載しています。

Google Analytics 4、Google Ads、BigQuery、MySQL、PostgreSQL、kintone——複数のデータソースを統合し、ダッシュボードで可視化した上で、日本語で質問するだけで分析結果を得られます。

GoogleのConversational AnalyticsはBigQuery限定ですが、NAVIGATE BIはマルチデータソースに対応。しかも設計から運用まで一気通貫で提供するので、社内にエンジニアがいなくても導入できます。

Tableau Free Editionの登場も追い風

BI領域ではもう一つ大きな動きがありました。Tableauが無料版(Free Edition)をリリースしたのです。

100以上のデータコネクタに対応し、BigQueryとの接続も可能。商用利用もOKという太っ腹な内容です。

ただし、Tableau Free Editionにはダッシュボードを他の人と共有・公開する機能がありません。分析は個人のPC上で完結します。チームでデータを共有して意思決定に使う、というユースケースには対応できない。

つまり、Tableau Freeは「個人で分析したい人」向け、NAVIGATE BIは「チームでデータを共有して経営判断に使いたい企業」向け、という棲み分けです。

「データに話しかける」がスタンダードになる時代

GoogleがConversational Analyticsを無料提供し(2026年9月まで)、Tableauが無料版を出し、カインズのような大企業がAIエージェントでExcel業務を自動化する。

これらの動きが示しているのは、「データに話しかけて答えを得る」という体験が、一部の技術者だけのものではなく、すべてのビジネスパーソンのスタンダードになろうとしているということです。

中小企業にとって、この変化は脅威ではなく追い風です。

大企業だけが持っていたデータ分析の力が、ツールの進化とコストの低下によって、中小企業にも手の届くものになっている。自然言語でデータに質問できる環境があれば、経営者自身がデータドリブンな意思決定をできるようになります。

問題は「やるかやらないか」ではなく、「いつ始めるか」です。

まとめ

Googleが進める「データと対話する世界」の要点を整理します。

  • Looker StudioのConversational Analyticsで、データに自然言語で質問できるようになった
  • BigQueryのData Agentで、業務に特化したAIエージェントを構築できるようになった
  • カインズは190万行のExcel業務をAIエージェントで自動化した
  • ただしこれらはエンタープライズ向け。中小企業が直接使うにはハードルが高い
  • 同じ体験を中小企業向けに提供するのがNAVIGATE BIのようなサービス
  • Tableau Free Editionは個人利用向けで、チーム共有には非対応
  • 「データに話しかける」がスタンダードになる時代は、すでに始まっている

企業規模に関わらず、データドリブンな経営を実現できる未来。それがNAVIGATEの目指す世界です。

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